波の音
暴力まがいのロマンティックイデオロギーの中であなたは誰と関係していますか?
海辺のホテルであなたはヒョウのような姿勢でタバコを吸いながら虚空を見つめている。この部屋には私とあなたしかいないのに、私なんて存在しないかのようにあなたは窓の外の波の音を聞き流している。私はそれに動じずに瞳を閉じている。
きっとその時にでも私のメランコリーは増幅しているに違いない。
心と身体が引き裂かれ、いつの間にかあなたと私は引き裂かれ、その間には決して渡ることのない海が流れ込んでる。
誰のために、何のために私のメランコリーは喪失されたことになっているのだろう。愛は希求すれば与えられるものでもなく、身体は回復されるものでもなく、あなたの心が悲しみに溢れているのが口惜しい。そうして私達は絶え間なく奏でられる波の音のように、永遠に引き裂かれながら海辺のホテルで時間を過ごしてゆくのです。