#生きる練習

日常系ゆるふわ思い付きブログ

足首のあたり

なんとか掴んだ最後の枝はみしみしと音を立てて、今にも私の身体を振り払おうとしている。落下していくのは時間の問題だ。しかし、突風が吹きでもすればすっきりと落ちられるというのに、苦しい均衡状態は続いている。いつだって落下する覚悟はできていると心の中で言ってみても、自ら手を離す勇気もないことが明らかになるだけだった。つい先程まで(とはいえどのくらいの時間が経っていたのだろうか)、この樹のちょうど顔のあたりに腰掛けていたはずなのに、今は奈落に一番近い高度にいて、腕だけが重力と対峙している。心はもう奈落の真ん中なのに。枝葉が擦れる音がする。樹が唸る。私は少し揺れる。それでもやはり枝は折れてはくれなくて、私の細身な身体を恨めばいいのか、手を離せない心を恨めばいいのかわからないけれど、わからないから事実が変わらないのか、事実が変わらないからわからないのか、こうやって堂々巡りの思考を重ねている間だけは自分の弱さを忘れられるのを知っている。できるだけ自分のせいじゃないふりをして(他の誰が見ていて、誰が咎める訳でもないのに)少し揺すってみると感触未満の音が鳴り響いて、痛いって言ってるように聞こえた。この樹との関係性だけが私の生きている証拠なんだと思った。私のどこかではまだ生きたいって思ってるんだろう。そうか、もう一度見上げたその先を目指してもいいのかもしれない。今まで脱力していた方の手を伸ばせばあと少しで他の枝に届きそうだ。掴んでいた枝を握りしめて身体全体を引き上げて、別の枝には少し掠った感覚が走る。その瞬間、掴んでいた枝は綺麗に裂けて、私の身体は宙へ投げ出された。あと少しだったのに。いや、あと少しではなかったのだろう。枝が折れた音は痛いって言ってたな。ごめんな。

どうしたことかね

何のための私って問いかけて

怒りなんて内側からの理不尽なものだったはずなのに

正しさを求めて怒る愚かしさったら

もっともっと無垢な私じゃないのなら

過去にだって未来にだって

牙を立てて足蹴にしてもいいんだよ

朝日を抱きしめる夢を見ながら

中指立ててもいいから

いつまでもお前が私の神経すり減らしてたって構わないけど

この毒は少しも残さずにお前に返す

でもありがとうな

お前がいなかったらお前を呪わずに死んでたかもしれない

そして私が呪うより幸せであってほしいと思う

お前の声なんかより

鬱屈した歌しか聴こえないけど

私を殺さないで済むだけのことなのさ

 

 

 

 

 

より良い生のために

 

自傷行為じゃない。あらゆる場があらゆる力学がすべての事象を自傷行為に変えさせる。I LOVE YOU.の一言も言えずにこんな世の中で。瞑想をしても歯を食いしばっても誰にだって差別されることもなく必要とされることもないそんな事しか考えられない凡庸な面白さで虫けらみたいに光の方へ進んでいってはめまいがして吐き気がして新月を探しては自分なんてどこにもなくって、釈然としないまま関係性を関係性だってことにして関係性なんてはじめからなかったのに夜を短く越えているそれだけの運命の中で私の髪はどこまで伸びたのだろうかと虚空に問いかけても返ってくるのは自動車がアスファルトを擦る音だけだったから、全ての接続を断ってみたけれど自分からは逃れられなくて部屋を煙で覆って愛読してた漫画に火をくべて拾ってきた石ころに問いかけるフリをして蛍光灯を見つめて映画を咀嚼して喉を詰まらせてここが安全地帯だって利口にしてて毛布を重ねて冬を待つ人の声も聞かずにしわくちゃになったビニールと折れた紙の切れ端を繋いで私なんてなかったことにして、

セックスがしたいんですだけを言わないでそういう雰囲気とか誤魔化してボコボコに傷つけて私がそういうの好きみたいって誤解されようが気持ち悪さを捨ててまで取り繕って、はじめから全体の愛なんて夢想するから悪いんだって私が言ってた。セックスのパートナーを愛ってごまかしてその他を疎外して私だけが東京にいるみたい。

安全圏にキャストされたサークルの外で喋れる猫と遊ぶ。あの季節になったらまたお別れなのに。

それで何がしたいんだっけって心を殺して死神みたいな顔をして酷いのは誰だって背中に張り付いた人に問いかけても、あれ?私って誰だっけ私って誰だっけ私って誰だっけ私って誰だっけ私って誰だっけ私って誰だっけ私って誰だっけ私って誰だっけでも、私って誰だっけ私って誰だっけ私って誰だっけ私って誰だっけ私って誰だっけ私って誰だっけ

だから私はここにはいない。

 

波の音

暴力まがいのロマンティックイデオロギーの中であなたは誰と関係していますか?

海辺のホテルであなたはヒョウのような姿勢でタバコを吸いながら虚空を見つめている。この部屋には私とあなたしかいないのに、私なんて存在しないかのようにあなたは窓の外の波の音を聞き流している。私はそれに動じずに瞳を閉じている。

きっとその時にでも私のメランコリーは増幅しているに違いない。

心と身体が引き裂かれ、いつの間にかあなたと私は引き裂かれ、その間には決して渡ることのない海が流れ込んでる。

誰のために、何のために私のメランコリーは喪失されたことになっているのだろう。愛は希求すれば与えられるものでもなく、身体は回復されるものでもなく、あなたの心が悲しみに溢れているのが口惜しい。そうして私達は絶え間なく奏でられる波の音のように、永遠に引き裂かれながら海辺のホテルで時間を過ごしてゆくのです。

マジックミラー

私は超現実的正夢を見ている。私が変性意識状態にならない理由も明らかだ。一時的に緊張していたとかはない。恐いんだ、自分が制御できなくなるのが。0か100かしかできないから。それは全く満たされていない心の部屋があるからだ。好きなあの人、好きだったあの人、好きになっても良いあの人、好きになりそうなあの人、いつもその誰かを見つめる時、写し出されるのは決まって私自身だ。醜い私。些末な私。お前は誰なんだ。過去の私?過去のものとされてしまった私?今の私?明日の私?傷ついた状態の私…簡単なことなのに、その誰かのためにある私の心、嬉しさ、楽しさ、満足は私の心の奥底では理解されているのに、いつも私みたいな影が邪魔をしている。倫理の仮面を被って、理性の仮面を被って、私の仮面を被って…お前は私の心のいらなくて大切な一部。覚悟なんてとっくに出来ているけれど、恐れているんでしょ?だから誰かの前に居座ってるんでしょ?誰かが私を見ないように。誰かが私を見ることを私が見ないように。本心はきっと大丈夫って、言ってほしい。

月影

どす黒くつやつやした鏡の中で私の心は揺らいでいる。それが静止した瞬間光沢を帯びるくらいまっさらな黒色になった私はあなたをありのままの姿で写し出すことでしょう。目を見開きなさい。私に写るあなた自身を真っ直ぐに見つめて下さい。

それはあなたなのですか?

私は恐れているのです。おそらくそれは、

林檎を頬張るその1コンマ手前で私は私を忘れる。いや、私になるのだろうか。

愛はいつも不可能で君と永遠に繋がった記憶には愛に関するものは何も刻まれちゃいない。

世界はあなたで終わり、あなたで始まる。それを繰り返す。

林檎が熟れるその直前まではいつも電気信号が地面を通ってその川辺まで届いているのに、どうして明日は昨日と同じ色でつやつやと光を放つのでございましょうか。本当のことを言って下さいまし。貴方は誰で貴方は誰になるのでございましょうか。

詩のような音楽のような鋭い旋律が電磁波を超えて……

熟すのを待って、腐るのを待って、熟すのを待って、腐るのを待って、、、

お願いですからこの円環の結びを解いて下さいまし。

これでおしまい。壊れた道筋を忘れて始まり。

難解なパズルみたいな言葉遊びをしながら夜を朱色に染めて、こんな飯事が飯事のまま終わればいいやと舌を噛んだ。

愛がないから愛になって

愛だったから愛じゃなくなって

知恵を畏れているのでしょう。

私を忘れているのでしょう。

私と貴方、心と身体は今もばらばらに裁断されているのでございます。どのように治療を施しましょうか見当もございませぬ。おお、同士よ、あなたはどうして私の中に入って来られたのでしょうか。私の命は愛の可能性に懸けられているのです。命を繋いでいるからこそ膿んだ傷口が愛の不可能性を証明してしまう前に、嫌味な契約書は全部捨てて、心を捧げたいと思う日々でございます。

しかし何を奏でようとも答えは見つかりませぬ。ですから私達は境界線上でダンスを踊りませんこと?